相続ノート NOTE

特別受益 その1 学費ってどうなの?

2020.11.15更新

<ポイント>
 遺産分割協議を進めていくなかでこのような争いをよく耳にします。

 「兄は大学まで私学に通って医師になった。私たちは公立の学校しか行かせてもらえなかった。兄はとても恵まれた環境で育っているのだから、遺産分割ではその部分を考慮してもらいたい」

 これは法律上「特別受益」と呼ばれる問題の一つです。
 
 特別受益にあたると、亡くなったときの遺産に特別受益分を加えて(これを「持ち戻し」といいます)遺産を評価し、それに基づいて遺産分割をすることになります。ですので、上のケースでいえば、兄はすでに学費等(特別受益分)を受け取っているわけですから、学費相当分を遺産に加えて評価し、遺産分割においてはそれを控除した額しか受け取ることはできないことになります。

 では、特別受益はどのような基準で判断するのでしょうか。
 
 民法には、被相続人から共同相続人に対する「遺贈」や「婚姻、養子縁組のため若しくは生計の資本としての贈与」が特別受益になると書いてありますが、もう少しかみくだく必要があります。
 
 遺贈とは、遺言によって財産を受け継ぐ方法をいいます。相続人に対する遺贈はすべて特別受益にあたります。
 
 婚姻、養子縁組のための贈与とは、例えば、持参金・嫁入道具・支度金などです。これらの費用も特別受益にあたります。
 
 分かりづらいのは、「生計の資本のための贈与」という部分です。
 「生計の資本のための贈与」とは、例えば、親に金を出して家を建ててもらったり、親から土地をもらったり、事業を始めるにはたっての資金を提供してもらったりした場合です。
 
 では、今回のような「学費」はどうでしょうか。
 
 一般的には、普通教育(小学校から高校)までの学費は特別受益には当たらないとされています。それ以上の教育に際して支払われた学費は、「生計の資本のための贈与」という方向で評価されます。ただし、被相続人の資力や社会的地位などから、その程度の教育が普通といえる場合には、親が子に対してなすべき扶養の範囲内にあるものとして生計の資本としての贈与に当たらないという考え方もあり得ます。
 したがって、被相続人がとても裕福でそうした教育を受けるのが当たり前といえる環境であったならば、特別受益には当たらないことになります。他方で、そこまで裕福ではなくその子だけが特別な扱いを受けて恵まれた環境で教育を受けていたといえる場合には特別受益にあたるということになります。
 
 なお、特別受益にあたる場合であっても、被相続人が「持ち戻し」を免除する意思表示をしている場合には持ち戻さずに遺産分割協議を進めることになります。

 簡単な事例で計算してみましょう。

家族構成

 父が亡くなり、母と長男・長女が相続人とします。

 父の遺産は6,000万円。長男の特別受益は2,000万円。

 特別受益の持ち戻しがない場合の相続分は、母1/2の3,000万円、長男・長女が各1/4で1,500万円となります。

 

特別受益無し

 

兄の特別受益を持ち戻した場合の相続分は、遺産が6,000万円+2,000万円で8,000万円。母はその1/2の4,000万円、長女は1/4で2,000万円となります。長男は、1/4の2,000万円ですが、特別受益分2,000万円を控除することになるため、2,000万円-2,000万円=0円という結果になります。
 

特別受益有り


以上

 

 

 

 

 

投稿者: 岸町法律事務所

相続と生命保険金

2017.01.24更新

< 事 案 >

X1(55才、公務員)、X2(50才、会社員)の父A(85才)は昨年末に亡くなりました。Aは、被保険者「A」・受取人「妻Y」とする死亡生命保険に加入していました(死亡保険金3000万円)。Aの遺産には不動産(6000万円)と預貯金(3000万円)があります。

Y(80才)は現在年金暮らしで、足腰が不自由です。A・Yは近所でも有名なおしどり夫婦で、遺産分割協議前まで親子関係にも大きな問題はありませんでした。
昨今、X1、X2及びYとの間で遺産分割協議を行いましたが、X1及びX2は、Yがすでに生命保険金3000万円を受け取っていることから、Aの不動産と預貯金については自分たちが取得すべきと考えています。

 

このような場合、どのように遺産分割をするのが適切でしょうか。

< 問 題 点 >

① 遺産における生命保険金請求権の考え方

② 特別受益(民法903条)との関係

 

< 回 答 ① >

1.生命保険金の法的性質

通説判例は、生命保険契約において受取人が具体的に指定されている場合、受取人の保険金請求権は、被保険者の死亡を停止条件として契約成立と同時に発生するものと考えます。

したがって、受取人が具体的に指定されている場合、保険金請求権及び保険金は被保険者の遺産には含まれず、受取人の固有財産になります。

 

< 補 足 >

ここで、受取人が具体的に指定されているといえるのはどのような場合かについて検討してみましょう。

本事案のように、「妻Y」と受取人が明確に特定されている場合で、かつ、保険金請求権発生当時にYが健在であれば、Yが受取人であることは明らかです。

では、例えば、本事案で、保険金請求権発生当時(A死亡時)に妻Yが夫と離婚していた場合はどう考えるべきでしょうか。

契約者の意思解釈の問題になりますが、判例は同種の事案で、「妻」という表示があることのみをもって被保険者の妻である限りにおいて「Y」を受取人として指定する趣旨を表示したものと解することはできないと判示しています。

では、本事案とは異なり、受取人を単に被保険者の「相続人」とだけ指定して、具体的な氏名を表示していなかった場合はどのように考えるべきでしょうか。

この場合も契約者の意思解釈の問題になりますが、実務的には、被保険者が死亡したとき相続人となるべき者を指定したものと解釈しています。

 

さらに次のような論点もあります。

例えば、本事案で、Aが受取人を「相続人」とだけ指定している場合、X1、X2及びYが受領する生命保険金の金額はいくらになるでしょうか。

Aの死亡により、生命保険金請求権は相続人であるX1、X2及びYそれぞれの固有財産になりますが、X1、X2及びYが有する生命保険金請求権の金額の割合をどのように考えるべきでしょうか。

一つは、法定相続分に応じて、すなわち、Yが1/2(1500万円)、X1及びX2が各1/4(各750万円)ずつ取得すると考える立場があります。しかし、そもそも、生命保険金請求権はAの遺産に含まれない以上、生命保険金請求権の配分割合について相続分を持ち出すことは論理的に一貫しません。そこで、妻X1、X2及びYはそれぞれ1/3(1000万円)ずつの割合で生命保険金請求権を有すると考えるのが適切です。

 

2. 本事案における生命保険金請求権の考え方

Aが加入する生命保険契約はYのためにする生命保険契約と評価できますので、Aの遺産には含まれず、Yの固有財産となります。

したがって、X1、X2及びYで行う遺産分割協議の対象となる遺産には含まれないのが原則です。

 

< 回 答 ② >

1. 生命保険金請求権が遺産に含まれないという結論の妥当性

上記のとおり、Yの有する生命保険金請求権がAの遺産に含まれないと考えた場合、当事者間で協議が調わないとX1、X2及びYは各法定相続分に応じてAの不動産及び預貯金を分割することになります。

そうすると、X1及びX2は不動産について各1/4の持分、預貯金についても各1/4(750万円)ずつ取得します(総額各2250万円)。

他方でYは生命保険金3000万円の他、不動産について1/2の持分、預貯金1500万円を取得することになります(総額7500万円)。

もっとも、X1及びX2の立場に立った場合、事案によっては、上記結論について納得できないケースもあるかもしれません。

そこで、特別受益(民法903条)との関係が問題になります。

2. 特別受益(民法903条)との関係

特別受益者とは、共同相続人のうち被相続人から遺贈又は贈与を受けた者のことをいいます。

 

特別受益者がいる場合、相続財産に特別受益たる遺贈や贈与を加えたものが相続財産とみなされます。

 

そして、特別受益者の相続分は、特別受益たる遺贈や贈与を加えた相続財産に対する法定相続分から遺贈又は贈与の価額を控除した残額になります。

 

仮に、本事案において、Yが取得する生命保険金請求権又は生命保険金が特別受益と評価できる場合、X1及びX2はYに対し、生命保険金請求権を遺産に持ち戻して相続分を算定すべきと主張することができます。

 

判例は、養老保険契約に保険金受取人とされた相続人が取得する死亡保険金請求権又は死亡保険金は、特別受益には当たらないと判示しています。

 

しかし、同判例は、保険金の額、この額の遺産の総額に対する比率、保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係、各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して、保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生じる不平等が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情がある場合には、同条の類推適用により、死亡保険金請求権は特別受益に準じて持ち戻しの対象となると判示しています。

 

特段の事情が認められるとした裁判例は、保険受取人である妻が取得した死亡保険金額が高額で相続財産合計額の61%に当たり、被相続人と婚姻期間が3年5ヵ月程度であるなどの事情を考慮し、妻と他の相続人との間に生じる不公平が著しいといえる特段の事情が存するとし、民法903条を類推適用しました。

 

本事案では、生命保険金の価額は3000万円であり、遺産合計額の約33%を占めるにすぎませんし、AとY、X1及びX2との関係性にも問題なく、また、Yは比較的高齢であり、足腰が不自由で今後の生活で特別な費用が必要になることも想定されることから、本事案では、YとX1及びX2との間に生じる不平等が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情がある場合とはいえず、保険金請求権は持ち戻しの対象にはならないと考えるのが適切です。

 

したがって、遺産分割協議案としては、下記のように分割するのが適切といえます。

 

X1及びX2 不動産 各1/4の持分

     預貯金 各1/4(750万円)

     総額  各2250万円

Y     生命保険金3000万円

     不動産1/2の持分

     預貯金1500万円

     総額7500万円

 

< 勘 処 >

生命保険金については、特別受益の持ち戻しの検討を忘れるべからず!!

投稿者: 岸町法律事務所

遺留分「侵害額はいくらになりますか?」

2016.08.29更新

< 事 案 >

 亡父Aは下記財産目録の遺産を有していましたが、先月亡くなりました。Aは全財産を後妻Bに相続させる旨の公正証書遺言を作成していました。
Aの子はX、Yのみであり、Aは生前にXに事業資本として3,000万円、Yに嫁入準備金として1,000万円をそれぞれ贈与しています。

家系図・資産関係図

 

 Aの遺言内容はX及びYの遺留分を侵害するでしょうか。

 

(財産目録)

遺産内訳 価額

土地 8,000万円

建物 2,000万円

株式 1,000万円

預貯金 3,000万円

借入金 -2,000万円

 

< 問 題 点 >

① 遺留分割合の計算方法

② 遺留分算定の基礎となる財産の計算方法

 

< 回 答 ① >

 

1  事前準備

遺留分額を算定する前段階として、まずは相続人の範囲及び被相続人の相続財産を確定する必要があります。

本事例では、相続人は後妻Bと子X、Yとなります。相続財産は上記の財産目録のとおりです。

 

2  遺留分の割合

相続人の範囲及び相続財産が確定したところで、次は各相続人の遺留分の割合を計算します。

遺留分の割合は相続人の範囲に応じて異なります。

 

① 相続人が直系尊属のみ ⇒ 被相続人の財産の1/3

② ①以外 ⇒ 被相続人の財産の1/2

 

さらに、上記①又は②の割合に各相続人の法定相続分を乗じて個々の割合を計算します。

本事例では、Aの相続人は後妻Bと子X、Yとなりますので、全体の遺留分は上記②のとおりAの遺産の1/2です。

そして、B、X、Yの各相続人の法定相続分は1/2、1/4、1/4です。

したがって、Bの遺留分は1/2×1/2=1/4、X、Yの各遺留分は1/2×1/4=1/8ずつとなります。

個別遺留分

 

< 回 答 ② >

 

1  遺留分算定の基礎となる財産

(計算式)
 遺留分算定の基礎となる財産

 =①(資産)+②(生前贈与等)-③(負債)

 

遺留分の基礎となる財産

 

各相続人の遺留分割合が確定したところで、次は遺留分算定の基礎となる財産を計算します。

計算方法は上記計算式のとおりですが、②生前贈与等及び③負債について詳しく説明します。

 

(1) 生前贈与等がある場合

 

生前贈与等が下記①~④のいずれかに該当する場合、贈与財産等を遺留分算定の基礎となる財産に加えて評価します。

① 相続開始前1年間にした贈与財産

② 当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってした相続開始の1年前の贈与財産

③ 当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってした不相当な対価の有償行為の対象となった財産

④ 相続人の特別受益となる贈与財産

 

本事例では、Aが生前にXに事業資本として3,000万円、Yに嫁入準備金として1,000万円が贈与されています。

これらの贈与はいずれも④の特別受益となる贈与財産に該当しますので、遺留分算定の基礎となる財産に加算して評価されます。

(2) 負債がある場合

 

負債については、原則として遺留分算定の基礎となる財産から控除します。

ただし、裁判例においては、負債が保証債務の場合控除しないとするものがあるので注意が必要です。

本事例では、保証債務ではないので、Aの負債は遺留分算定の基礎となる財産から控除することになります。
   

< 補 足 >

本事例のように1人の相続人に対して負債を含めた全財産を相続させる旨の遺言がある場合、負債の評価が争われることがあります。すなわち、第三者である債権者は遺言内容に拘束されないため、債権者との関係では負債は法定相続分に応じた分割債務になります。そうすると、遺留分侵害を主張する相続人は、債権者との関係では負債を負うことになりますので、遺留分侵害額を計算するにあたり、法定相続分に応じて承継される負債部分のリスクを加算すべきと主張したいところです。しかし、判例は、法定相続分に応じた負債は加算しないとしています。

 

2 本事例について

 

(1) 上記のことをふまえて以下のとおり計算すると、遺留分算定の基礎となる財産は1億6,000万円となります。

 

本件における遺留分算定の基礎財産

 

(2) 遺留分侵害額の算定

 

X、Yの遺留分を侵害しているか否かは、X及びYの遺留分額を計算し、X及びYが実際に相続により利益を得た金額を比較します。

X、Yの遺留分額は、遺留分算定の基礎となる財産に遺留分の割合を乗じて計算します。

そうすると、X及びYの遺留分額は、1億6,000万円×1/8=2,000万円となります。

他方でX及びYが実際に相続により利益を得た金額は以下のとおりです。

本事例では、全財産をBに相続させる旨の遺言があるため、上記補足のとおり、相続債務については特別受益から控除しないことになります。

X: 特別受益3,000万円>遺留分額2,000万円

Y: 特別受益1,000万円<遺留分額2,000万円

X及びYの各遺留分額と実際に相続による利益を得た金額とを比較しますと、Xについては、遺留分を侵害しませんが、Yについては2,000万円-1,000万円=1,000万円の限度で遺留分を侵害していることが分かります。

以上のことから、Aの遺言内容は、Xの遺留分は侵害しませんが、Yの遺留分は1,000万円の限度で侵害するという結論になります。

X、Yの遺留分侵害額

 

なお、本事例ではYはBに対して遺留分減殺請求をすることになります。遺留分減殺請求の対象となるのは全遺産となりますので、自宅が遺留分減殺請求の対象にもなり得ます。Bからは、不動産の評価方法を争うなどしてYの遺留分侵害額を争うなどの反論が考えられます。

本事例ではBにある程度の預貯金があるため、価額賠償により解決することも考えられます。近年ではこのような場合にキャッシュがなく遺留分減殺請求の対応に窮する事案も数多くあります。遺留分問題を相続人に残さないためには生命保険等を活用することも有益です。

 

< 勘 処 >
 遺留分算定の基礎となる財産を正確に算定すべし!!

 

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投稿者: 岸町法律事務所

共有物分割訴訟「共有不動産の行方・・・」

2016.07.04更新

< 事 案 >
亡父は先祖代々の自宅の土地建物(以下「本件不動産」と言います。)を所有していましたが、とある事情から、本件不動産の所有権が金融機関に移転しました。しかし、その後、先祖代々の土地建物を失いたくないとの思いから、本件不動産を長男Y1、次男Xと、三男Y2の3名で各1/3ずつの割合で買い戻しました。自宅には、父が亡くなる前から長男Y1とその家族が住んでいます。他方、X及びY2はすでに別の場所で家族と暮らしています。

家系図 不動産

Xは持分1/3をY1に買い取ってもらいたいと考えておりますが、このような場合、どのようにすればいいのでしょうか。

 

< 問 題 点 >
① 本件不動産の持分を買い取ってもらえるか?
 ⇒共有物分割訴訟とは?
② 本件不動産の分割方法

 

< 回 答 ① >
 本件不動産は、X、Y1、Y2の共有状態です。

 共有者は共有物の分割をいつでも請求することができます。

分割の方法として持分の買取請求もできますので、XはY1に対して、自己の持分1/3を買い取る旨請求することができます。

 

 それでは、Y1がXの要求に応じない場合はどのようにすればいいのでしょうか。

 

 このような場合、Xは裁判所に共有物分割訴訟を提起することができます。

 ただ、共有物分割訴訟は、各共有者間で分割方法を統一的に判断することが求められることから、すべての共有者を訴訟の当事者にしなければなりません。

 したがって、XはY1のみならずY2も被告として訴訟提起をする必要があります。

 

< 回 答 ② >

共有物分割訴訟を提起した場合、本件不動産の分割方法はどのようになりますか。

共有物分割訴訟は、裁判所が裁量で分割方法を決定するため、必ずしも当事者の希望通りの判断になるとは限りません。

ただ、実務上、裁判所の判断方法は下記のとおりとなります。

 

(1)現物分割
まず、共有物の原則的な分割方法は、現物分割となります。例えば、一筆の土地を二筆の土地に分筆する方法です。ただ、本事例のように、土地上に居住用の建物があるなど分割によって土地の価格を著しく減少させるおそれがある場合には現物分割をすることは望ましくありません。現物分割 

 

(2)換価分割

現物分割が望ましくない場合、換価分割という方法が考えられます。換価分割とは、共有物を競売で換価し、共有者の持分に応じて分割する方法です。ただ、本事例のように、土地上に居住用の建物があり、現に特定の共有者が居住しているような場合、競売で居宅を失うという酷な結果を招くことになり、妥当な解決にならないこともあります。

 換価交換

(3)価格賠償の方法による分割
実務では、現物分割や換価分割以外にも、下記の述べる特段の事情があるときは、価格賠償の方法による分割をすることができます。
価格賠償の方法による分割とは、本事例に即していえば、本件不動産に居住するY1に本件不動産を単独所有させるのと引き換えに、X及びY2に対して各持分に応じた価格を賠償させる方法をいいます。

 価格賠償

< 参 考 >

判例は、価格賠償の方法による分割ができる特段の事情について以下のように考えています。

 

① 共有物の性質・形状、共有関係の発生原因等の事情を総合的に考慮し、共有物を共有者のうちの特定の者に取得させるのが相当であると認められること

② 他の共有者にはその持分の価格を取得させることとしても共有者間の実質的公平を害しないと認められること

 

そして、②が認められるためには、

 

㋐ 共有物の価格が適正に評価されていること

㋑ 共有物を取得する者に賠償金の支払能力があること

 

が必要になるとしています。

 

 本件不動産については、もともと先祖代々の不動産として亡父、その後長男Y1が居住し、現在もY1とその家族が居住していること、X及びY2は本件不動産とは別に居住用の不動産があることなどから、Y1に取得させるのが相当であるといえます(①)。

 本件不動産の価格が適正に評価され(②㋐)、かつ、Y1がX及びY2の持分に相当する賠償金を支払能力があれば(②㋑)、共有者間の実質的公平は害されないと認められるため、裁判所が価格賠償による分割を命じる判決を言い渡すことができることになります。

 

< 共有物分割訴訟のデメリット >

 以上の通り、共有物分割訴訟は、裁判所の裁量によって分割方法が判断されてしまう可能性があり、自分の思い通りにはならない結果に終わることもあります。

 さらに、共有物分割訴訟は不動産の価値を巡って意見が対立することも珍しくなく、長期化することもままあります。

 したがって、特に不動産については、相続により共有状態となることがないよう、遺言を作成する等事前の対処が重要です。

 

< 勘 処 >

・不動産の共有状態を作らないよう事前に対処をすべし!

 

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投稿者: 岸町法律事務所

遺産分割「相続人が未成年者だったら・・・」

2016.06.13更新

< 事 案 >

 昨年父が亡くなりました。父の相続人は、母と私、父より前に亡くなった私の弟の息子Aと娘Bの4人になります。現在、AとBは未成年者で弟の妻Cと生活をしています。

 

 このような場合、どのように遺産分割協議をすすめていけばいいのでしょうか。

 

< 問 題 点 >

①未成年者が単独で遺産分割協議をすることができるか?

②親権者が代わりに遺産分割協議をすることができるか?
⇒妻CはAとBを代理して遺産分割協議をすることができるか?

 

< 回 答 ① >

 遺産分割協議を有効に成立させるためには相続人全員の同意が必要です。

 遺産をどのように分配するかを判断するには、相応の判断能力が必要になります。成人に比べて経験に乏しい未成年者については、民法上、一定の配慮をして未成年者を保護しています。具体的には、未成年者が単独で行った財産行為については取り消すことができるとされています。

 したがって、相談事例では、AとBが遺産分割協議に同意したとしても、後日、未成年者又はその親権者により取り消される可能性があります。

 

< 回 答 ② >

 では、CがAとBを代理して遺産分割協議をすることができるでしょうか?

 未成年者は、父母の親権に服します。そして、親権者は、未成年者の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表します。したがって、遺産分割協議は、法定代理人である親権者が未成年者に代わって行うことができます。

 相談事例では、CがAとBの親権者として遺産分割協議を行うことになりそうです。

 しかし、AとBの親権者であるCは、AとBの双方の代理人として遺産分割協議を行うことはできません。AとBはそれぞれ遺産を取り合う関係にあるため、AとBの利害は衝突する可能性があります。そのため、CがAとB双方の代理する遺産分割協議はAとBの利益が相反する行為にあたり、無効になります。

 

< 対 処 法 >

 では、どうすればいいのでしょうか?

 このような場合、親権者は代理人になることができない子のために「特別代理人」を選任することを家庭裁判所に請求しなければなりません。したがって、CはA又はBのために、A又はBの住所地を管轄する家庭裁判所に対して特別代理人選任の申立てをすることになります。
 もちろん、Cが申立てをしない場合でも、他の相続人のほか、AやB自身も単独で申立てができます。

 また、特別代理人候補者は、当該利益相反行為について利害関係がない人で特別代理人として適当と思われる人物にするのが一般的です。例えば、相続人でない親族や弁護士などです。

 相談事例では、CはA又はBのどちらか一方の代理人にしかなれず、代理人になれない一方の子のために、例えばCの親などを特別代理人候補者として申立てをすることが考えられます。

 なお、相談事例とは異なり、相続人が母と未成年の子の場合でも、遺産分割協議を行うことは、母と子の利益が相反するため、子の特別代理人を選任する必要があります。この場合も母と子が遺産を取り合う関係にあるため利害が衝突する可能性があるからです。

 

< 参 考 >

 ちなみに、どのような場合が利益相反行為になるかについて、判例は、親権者の動機・意図にかかわらず、行為自体を外形的客観的に考察して判断すべきという立場をとっています。

【利益相反行為にあたるとされた事案】

①親権者が第三者の金銭債務につき、自ら連帯保証をするとともに、同一債務につき子を代理して連帯保証をし、かつ、親権者と子の共有する不動産に抵当権を設定する行為

②親権者が共同相続人である数人の子を代理して遺産分割協議をする行為
 

【利益相反行為にあたらないとされた事案】

①(成年後見の事案)共同相続人の一人が他の共同相続人の全部又は一部の者の後見をしている場合において、後見人が被後見人全員を代理してする相続放棄

②親権者である母が、未成年者の継父である夫の債務の担保のため、未成年者所有の不動産に抵当権を設定する行為

③株式が未成年の子とその親権者を含む数人の共有に属する場合において、親権者が未成年者の子を代理して株主の権利を行使すべきものを親権者自身と指定する行為

 

< 勘 処 >
 相続人の中に未成年者がいる場合には、利益相反について注意すべし!

 

 

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投稿者: 岸町法律事務所

成年後見・任意後見「認知症の父の不動産を売却できますか?」

2016.06.06更新

< 事 案 >

独居の父は重度の認知症で、身の回りのことがほとんどできなくなりました。家族は全員県外に住み、日常的に父の面倒をみることはできません。父は認知症になる前、「自分のことは自分でやる。ぼけても家族の手は借りない。そうなったときは自宅を売って老人ホームに入る。」とよく言っていました。そこで、家族は、父が居住する不動産を売却したお金で父を老人ホームへ入所させることを計画しました。

 

上記事案で自宅を売却して老人ホームの入所費用を捻出することはできるでしょうか??

< 問題点 >

・重度の認知症の患者が単独で不動産を売却できるか?
⇒お父様は重度の認知症で身の回りのことをできない状態ですので、不動産の売買といった重大な判断をすることができるのかが問題となります。

 

< 回 答 >
不動産の売買は売買契約にあたります。売買契約を有効に成立させるためには、売主の不動産を売却する意思表示と買主の代金を支払う意思表示とが合致する必要があります。不動産を売却する場合、コンビニでジュースを買う場合と異なり、重大な判断が必要になりますので法律上も相応の判断能力を有していることが必要になります。

お父様はすでに重度の認知症のため、現時点で本人が不動産を売却するという重大な判断をすることは困難です。過去にそのような発言をしていたとしても、契約締結の段階でその判断をすることができないため、不動産を売却することはできません

 

それでは、不動産を売却するためにはどうしたらいいのでしょうか。

 

< 対処法 >

 判断能力が不十分な場合に不動産を売却するには、法律上二つの方法があります。

A 成年後見制度

一つは、家庭裁判所に後見開始の審判の申立てをする方法があります。家庭裁判所が後見開始の審判をするときは、成年後見人が選任されます。成年後見人は、本人の財産管理や療養看護などを行い、その事務に関して家庭裁判所に定期的に報告することが義務付けられています。
ただ、相談事例では、ご家族が全員県外のため、誰を成年後見人に選任するかという問題があります。成年後見人は、財産管理だけでなく、お父様の生活の面倒をみたり、療養看護をする必要があるため、選任された方に相応の負担がかかります。このような場合、裁判所に弁護士などの専門家を成年後見人として選任してもらうこともできます。

お父様の居住用の不動産を処分する場合、お父様がこれまで慣れ親しんだ自宅を処分することになり、本人の利益になるか否かを慎重に吟味する必要があるため、家庭裁判所の許可が必要です。事案によっては、本人の利益にならないと判断され、不動産の売却が不許可となることも考えられます。

このように、成年後見制度は、本人が事前に準備して設計できる制度ではありません。どちらかといえば、認知症などで本人の判断能力が不十分になった場合に生じる様々な不都合を解消するための制度という側面があります。

B 任意後見制度

もう一つの方法として、任意後見制度があります。

任意後見制度とは、将来判断能力が不十分になったときにそなえて、自分の生活や療養看護、財産の管理に関する事務の処理を特定の者に委託する内容の契約をし、判断能力が不十分になった時点でその契約内容に基づき本人が委託した内容を実現できる制度です。

 

手続きの概要は以下のとおりです。

 

① 委託する後見事務の検討

判断能力が不十分になった場合に、療養看護・財産管理に関する事務について、「だれ」に「どのようなこと」を委託するか(代理権を付与するか)を検討します。

 

② 任意後見契約書の作成

委任を受ける者の了承が得られたら、任意後見契約を公証役場において、公正証書として作成しなければなりません。
公正証書を作成したときは、法務局の後見登記ファイルに任意後見契約の登記されます。

 

③ 任意後見の開始

本人の判断能力が不十分な状況になった段階で、家庭裁判所に任意後見監督人選任の申立てをし、選任された段階で、任意後見契約の効力が発生します。

※ 任意後見監督人が選任される前であれば、本人又は任意後見受任者はいつでも任意後見契約を解除できます。ただし、解除は公証人の認証を受けた書面によって行う必要があります。

 

④ 後見事務の監督

任意後見監督人の選任後は、任意後見人は、任意後見監督人のチェックを受けながら、任意後見契約に記載された後見事務を実現していきます。

 ※ 任意後見監督人の選任後は、本人又は任意後見人は正当な事由がある場合に限り、家庭裁判所の許可を得て、任意後見契約を解除できます。

 

⑤ 後見事務の終了

本人が後見開始の審判等を受けたときは、任意後見契約は終了します。

 

相談事例では、お父様が認知症になる前に、例えば長男に不動産の処分や福祉関係施設への入所に関する契約の締結等の代理権を付与する任意後見契約を作成しておけば、裁判所の許可を取らずとも不動産を売却できた可能性があります。

 

< 勘 処 >

なるべく早く任意後見契約を締結すべし!

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投稿者: 岸町法律事務所

遺言能力「認知症でも遺言は作成できますか?」

2016.05.23更新

< 事 案 >

夫が最近、軽度の認知症と診断されました。

夫にはそれなりの資産がありますが、長男と次男の仲が決して良いとは言えません。

夫の死後、長男・次男がもめないように

今から遺言を書くことは可能でしょうか?

 

< 問 題 点 > 

①軽度の認知症の方が書いた遺言は有効か?

⇒軽度の認知症のご主人に遺言を書く能力があるのか?

②遺言能力が否定された場合はどうなるか?

 

< 回 答 ① >

遺言を作成するためには、遺言者に遺言をする能力がなければいけません。

遺言をする能力とは、遺言者が遺言事項を具体的に決定し、その法律効果を理解するのに必要な判断能力(意思能力)をいいます(以下「遺言能力」といいます)。

遺言能力の有無は、一般に、7歳程度の知的判断力が目安とされています。

しかし、行われる行為の種類や内容によって高度のものが要求されることもあります。

 

今回のご相談のような事例で、「妻にすべてを相続させる」との遺言を作成する場合には、内容も単純なものなので、求められる遺言能力もそこまで高度のものにはなりにくいといえます。

他方で、遺言信託を利用するなど複雑な方法を利用する場合などは、比較的高度の遺言能力を求められる可能性が高いです。

今回は軽度の認知症とのことですので、作成した遺言について、事後的に遺言能力がなかったとされる可能性は低いと考えますが、複雑で特殊な内容の遺言を作成する場合には、注意が必要です。

 

< 回 答 ② >

遺言能力が否定されてしまった場合の遺言はどうなるのですか?

遺言能力がない状態で作成された遺言は無効です。

これはどのような遺言の方式をとっても同じです。

遺言がない場合と同じ状態になりますので、法定相続分に応じて相続するか、相続人全員での遺産分割協議をする必要があります。

 

< 対 処 法 >

今回の相談事例では、長男と次男の仲が良くないとのことですので、ご主人の死後に話し合いで解決するのが難しい場合も少なくありません。

したがいまして、揉めることなく相続するには、ご主人の遺言能力を見極めた上で、ご本人が理解できる内容の遺言を作成することが良いと思われます。

遺言者が遺言作成時に遺言能力を有していたか否かは多くの場合事後的な判断になります。

遺言能力が争われても万全な対策を講じておけば、無用な紛争を回避することができます。

早い段階で専門家に相談することをおすすめします。

 

< 参 考 >

遺言能力の有無は、法的評価ですので、争いがある場合は最終的に裁判官が判断します。

公正証書遺言を作成したにもかかわらず、遺言作成当時に遺言能力を有していなかったとされた裁判例は少なくありません。

裁判所が遺言能力の有無を判断するにあたって考慮しているのは、主に以下の事情です。

① 遺言の内容

⇒ 遺言事項が複雑になれば求められる遺言能力も高度になります。

② 病状・認知症の程度

⇒ 認知症が重度になれば遺言能力を否定する事情となります。遺言作成当時のMRI検査等によって脳の器質的変化の有無なども重要な判断資料としています。

③ 遺言をするに至った経緯・時間的関係

⇒ 例えば、消極的だった遺言者に対して第三者が不当な働きかけをして有利な遺言を作成させた場合や、認知症発症からかなり時間が経過して遺言が作成された場合などは、遺言能力を否定する事情になる可能性があります。

 

< 勘 処 >

遺言能力に応じた遺言作成を心がけるべし!

 

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投稿者: 岸町法律事務所

複数の遺言「迷走する遺言・・・」

2016.05.01更新

父が生前、「自宅の土地・建物を長男Aに相続させる」との公正証書遺言(遺言①)を作成しました。

しかし、その後、父は「自宅の土地・建物を次男Bに相続させる」との遺言を自筆で作成しました(遺言②)。

さらにその後、今度は「遺言②を撤回する」との公正証書遺言(遺言③)を作成しました。

 

このような場合、どのように考えれば良いのでしょうか?

 

遺言は、遺言者の生存中は、いつでも何度でも、全部又は一部の撤回をすることができます(民法1022条)。

ただし、遺言を撤回するためには、「遺言の方式に従って」行う必要があります(民法1022条)。

例えば、遺言①を作成後、長男Aに対して口頭や手紙で「遺言①を撤回する」と伝えても遺言の方式に従った撤回とは認められません。

遺言②の中に「遺言①は撤回する」と記載されていれば、遺言②が公正証書遺言でなくても撤回が認められます。

 

明記されていなくても、次の3つの類型は撤回したものとみなされます。

① 前後の遺言が内容的に抵触する場合(民法1023条1項)

② 遺言の内容と、その後の生前処分とが抵触する場合(民法1023条2項)

③ 遺言者が故意に遺言書または遺贈目的物を破棄した場合(民法1024条)

したがって、冒頭のケースのように単に「自宅の土地・建物を次男Bに相続させる」と記載された遺言②(遺言①を撤回するとは明記されていない)を作成した場合でも、遺言を撤回したものとみなされます。

 

冒頭のケースでは、さらに「遺言②を撤回する」との遺言③もあります。

遺言③によって遺言②の効力が生じなくなった場合でも、遺言①が復活しないのが原則です(民法1025条本文)。

したがって、父の遺産については遺産分割協議を行う必要があります。

 

では、仮に遺言③において、「遺言②を撤回し、遺言①に従って相続させる」と記載されていた場合はどうでしょうか。

判例(最判平成9年11月13日民集51巻10号4144頁)は同様の事案で遺言者の最終意思を尊重し、「遺言書の記載に照らし、遺言者の意思が当初の遺言の復活を希望するものであることが明らかなときは、当初の遺言の効力が復活する」と判断しました。

仮に、冒頭の事案で、遺言③において「遺言①に従って相続させる」と明記されていた場合、遺言①に従って相続させることが遺言者の最終意思であると考えられます。

したがって、例外的に遺言①の効力を復活させることになります。

 

このように、遺言が複数ある相続の場合、検討すべき問題が多数あります。

複数の遺言が見つかった場合はできるだけ早めに専門家に相談することをおすすめします。

投稿者: 岸町法律事務所

遺言と異なる遺産分割「望まない遺言…」

2016.04.21更新

父は長年認知症を患い、年末から急に体調崩して入院していましたが、残念ながら年明けに亡くなりました。

もともと、私の両親は兄と実家で暮らしており、土地・建物は父名義でした。

父は、20年以上前、将来兄の家族と同居するため、二世帯住宅にしました。

しかし、兄の結婚相手の希望により同居の夢が叶わず、結局弟の私が両親と同居し、両親の面倒をみることになりました。

それで家族全員が納得していました。

 

土地・建物を私名義にすることでまとまった矢先、遺品を整理していたら、次のような内容の遺言が出てきました。

 

「土地・建物を兄に相続させる」

 

どうやら父は20年以上前に遺言を作成していたようです・・・・

 

だれも望んでいないにもかかわらず、遺言のとおりにしなければならないのでしょうか??

   
このような遺言がある場合、基本的には兄が遺言のとおり土地・建物を相続することになります。

 

もっとも・・・

 

相続人全員の同意があるなど一定の条件のもとでは、遺言と異なる内容の遺産分割協議をすることが認められています。

 

遺言と異なる内容の遺産分割協議ができるかどうか、まずは専門家にご相談ください。

投稿者: 岸町法律事務所

再度の遺産分割「こんな遺産は聞いていない…」

2016.04.19更新

父の葬儀の際に、久々に会った弟が「親父の財産はおれにも権利がある。それなりの金額をもらえればこちらも事を荒げるつもりはない」と言ってきました。

知人に相談したところ、弟の言い分にも一応理由があることが分かり、母と私と弟で遺産をどのように分けるか話合い、弟にそれなりの金額を渡すことで話がつきました。

弟にはお金だけ渡して、自宅と預貯金については母と私の二人で分ける旨の遺産分割協議書を作成しました。

 

ところが、葬儀も終わってしばらく経ったころ、固定資産税の納税通知書が届きました。

その固定資産税の納税通知書をみると、自宅以外に父名義の土地があることが新たに分かりました。

今回のように遺産分割協議書に含まれていなかった遺産が後日でてきた場合、どうしたらいいのでしょうか??

 

遺産分割協議書では、基本的に、遺産を「誰が」「何を」「どのような割合で」取得するかを特定する必要があります。

遺産分割協議書に含まれていない遺産が後日でてきた場合、その遺産についてはどう相続するのか決まっていないことになります。

したがって・・・・

 

再度その遺産について分割協議をしなければなりません。

 

特に相続人間で「争う相続」になっている場合、一度の手続きですべて解決しなければ長期化してしまいます。

遺産分割協議に失敗しないためには、事前に専門家にご相談することをお勧めします。

投稿者: 岸町法律事務所